チェーホフの小説から名前をとった精神病院バーПалата №6【キエフ/ウクライナ】
ロシアの作家、アントン・チェーホフの作品に『六号室(Палата №6)』という短編小説がある。
田舎の精神病院を舞台にした小説なのだが、ウクライナのキエフに、その小説から名前をとった「Палата №6」というバーがあると知った。
店内は精神病院をイメージしており、店員さんもナース服などを着ているという。
一体全体どんなバーなのか気になって仕方なかったので、キエフに訪れた際に早速行ってみた。
Google Mapを頼りに、バーがあるはずの場所に辿り着いたわたし。
しかし、バーらしき店は見当たらない。
こちらがバーがあるはずの建物の入り口なのだが、ご覧の通り店の看板は見当たらず。
それどころか、なんとも入りにくい雰囲気を醸し出す固く閉ざされた鉄扉が立ちはだかる。
おかしいなぁ、住所が間違えているのかなぁ、と通りをウロウロしていたら、近くにいた男性が「どうかしましたか?」と声をかけてくれた。
「Палата №6というバーに行きたいのですが……」と言うと、彼は慣れた様子で場所を教えてくれた。
てっきり住所が間違えていたのかと思っていたが、先ほどのあの鉄の扉の先に店があると……
言われた通りに扉を開けて、階段を上り、裏庭のような場所に出る。
やはり何の案内も無いので、さっきの男性が教えてくれなかったら、絶対に辿り着けなかったに違いない。
あんな扉の先に店があるとは思えないもの。
裏庭に出ると、右手に地下へと続く階段がある。
その階段を下りるとバーがあるのというのだが……
いや、暗い、怖すぎる。
相変わらず店の看板も出ていないので、この先に本当にバーがあるのかどうかも分からない。
実はヤバい精神異常者の住処で、バーがあると信じて訪れる人を監禁して拷問にかけているかもしれない。
と、本気でそんな考えが頭をよぎった。
しかし、勇気を持って階段を下り、扉を開けると……
おお!
なんとも隠れ家的だが、「Палата №6」は確かに存在した。
ヤバそうな人は一人もおらず、なんなら薄暗い照明とむき出しの煉瓦が良い雰囲気の、広くて素敵なバーだ。
しかし、入り口脇には医療用ベッドが置いてある。普通はバーにないぞ、こんなベッド。
入店した途端、オーナーらしき女性がすぐに「おひとりですか?」と声をかけてくれたので、場違いな雰囲気で気まずくなることもなかった。
1人なので、カウンター席に座る。
カウンター内にはショットグラス代わりの試験管が並んでいる。
えびの天ぷらを注文。120UAH(当時のレートで500円強)。
こう見ると、ケチくさい量に見えるかもしれないが、実際は大ぶりのえびが使われていて、しっかり美味しかった。
手術服風のコスチュームに身を包んだ店員さんたち。
女性店員さんは、一人だけナース服を着ていた。
バーカウンターから見た入り口。
わたしが入店した時は、暗くなりかけていた時間帯で、偶然入り口が点灯される前だったようだ。
店を出る頃には電灯がついており、階段も明るく照らされていた。
とにかく来る人を拒むかのような分かりにくい場所にあるバーだが、店員さんの愛想も良く、食事も美味しい上、お酒もリーズナブル。
食事とお酒で、お会計は180UAH(約750円)だった。
試験管でお酒を頼みたい気もしたが、ショットで何かを飲む気分にはなれず、ワインを頼んだ(ワインはグラス1杯なんと30UAH!130円くらい)。
次、誰かと行く機会があればぜひとも試験管でアルコールを飲んでみたい。
わたしが訪れたのは平日の 夕方だったが、お客さんもちらほら。
みんな常連のようだった。
日本のフェティッシュバーのように、お客さんと店員のお姉さんのプレイが始まるのかと少し期待もしたのだが、それはなかった。
【行き方】
中央駅からは1.5km。ブルヴァルノ=クドリャフスカ通り沿いにある。まずは住所通りの場所にある、通りに面した建物を探す。あとは記事でも紹介した通り、勇気を出して鉄の扉を開いて階段を少しのぼって裏庭へ出る。出て右にある地下への階段を下りれば、そこにきちんとバーがあるので安心して訪れてください。
【ウェブサイト】
【場所】
вулиця Бульварно-Кудрявська, 31А, Київ, 01054 ウクライナ
(Bulvarno-Kudriavska St, 31А, Kyiv)
(最終訪問:2019年5月)