東欧マニアックガイド

これまで訪れた東欧圏のちょっとマニアックな場所を紹介しています。

予約してったホテルがまるで廃墟だった件【エルデネト/モンゴル】

時は2013年にさかのぼる。

当時東京に住んでいたわたしは、年に一度の海外旅行を楽しみに、週7労働に耐え忍んでいた。

その年の秋、いつものように旧共産圏の香りが感じられる国を探し求めてわたしが訪れたのは、ポーランドでもウクライナでもロシアでもなく、モンゴルだった。

 

モンゴルは、ソ連の衛星国だったため、首都のウランバートルでは社会主義的な建築物がよく見られる。

それだけでもワクワクしてくるのだが、鉱業で栄えるモンゴル第二の都市エルデネトは、ロシア人の技術者が多く住み、モンゴルにいながらロシアの地方都市の雰囲気が味わえるというではないか。

旧共産圏によくある謎のモニュメントも見られるということで、期待に胸を躍らせて、ウランバートルからバスに揺られて7時間、わたしはエルデネトの地を踏んだ。

 

ここからは旅行記的に、写真とともにエルデネトの街を紹介していこう。

 

2013年10月11日(金)

エルデネトのバスターミナルに到着したわたしは、そこで客引きをしていたまるで買い物帰りのおばさんの車(一応タクシー)に乗り込み、事前にネットで予約しておいた宿へと向かった。

しかし、おばちゃん運転手が「ここだよ!」と停車したのは、廃墟の前。

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入り口のガラスは割れてるし、中にはガラクタが放置されてるし、ここ絶対廃墟。

 

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まず普通に営業しているホテルの入り口前がこんなに草ボーボーってあるか?

 

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と思ったものの、タクシーのおばちゃんは戸惑うわたしをよそに、トランクからわたしのスーツケースを運び出してさっさと消えてしまった。

何やら嫌な予感がしつつも、恐る恐る半開きのドアを開けて中に入る……。

おぉ、普通に入れてしまった……。

しかし、フロントには誰もいない……。

やはり廃墟か……とあきらめた途端、奥からゴム手袋をはめたおばさんが突如現る。

「あの……日本から2泊予約してい……」

掃除のおばさんは、わたしが言い切らないうちに、ついてこい的なジェスチャーをして階段をのぼりはじめた。

やった!予約できてたんだ!と安心して、おばさんについて2Fにのぼるわたし。

そして、ある部屋のドアをノックするおばさん。

お、ここがわたしの部屋か、よしよし、さっそく中に入って手洗いうがいするぞ、と中に入れてもらおうとすると、なぜかドアを開けずに「中で誰か寝てる」的なジェスチャーをする彼女。

英語で「ネットで予約したんだけど……」と伝えるも、一切通じておらず、窓から数百メートル先に見えるゲルを指さして、「あそこに行って電話をしろ」というようなジェスチャー

 

掃除のおばさんには英語は一切通じないし、わたしはモンゴル語を話せないし、ここにいても埒が明かない。

やはり、あのゲルに助けを求めるしかない。

そうだ!きっとあそこにこのホテルのオーナーがいるのかもしれない!と、気を取り直して、数百メートル離れた野原にぽつんとたたずむゲルへ向かう。

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重いスーツケースを引きずりながら、道なき道を歩いてゲルへと向かった。

 

そして、ゲルに着いた。

勇気を振り絞って、扉をノック。

コンコン。

……沈黙。

誰もいないのかな……と不安に思っていたら、扉が開いた。

しかしそこにいたのは……

日本でいうところの、ニッカポッカを履いた職人のような6、7人の労働者風の男たち。

そうか、ここは工事現場の詰所なのか。

ロングコートに大きなスーツケースを引いたわたしは完全に場違いで、中のみんなもきょとんとしている。

英語はもちろん通じなかったので、もはや日本語で「あのホテルを予約したんだけど、さっき行ってみたら追い出されちゃったんだよね。で、ホテルの人にこのゲルに行ってみろって言われたんだよ」と説明するわたし。

しかし、もちろん誰一人として通じるわけがない。

みんなわたしが、さっきの廃墟風ホテルを探していると思ったらしく、「ホテルならあそこだよ!」「ほら、そこの道を通っていくのさ」(←憶測)などなど、親切にも先ほどのホテルを指さして何回も一生懸命教えてくれる。

「いやいや、知ってるの、それは!えーっと、そうじゃなくて……w」と困っていると、一台の車がゲルの近くに停まった。

そして、おそらく彼らの雇い主であろう男性が下りてきて、英語で「どうしたの?」と聞いてきてくれたのだ……!

事情を説明すると、「じゃあ、車に乗りな!街で一番のホテルに連れてってやるよ!」と、さっそくわたしのスーツケースを車に乗せるお兄さん。

大丈夫かな……と心配しつつも、ここにいてもどうしようもないのでお言葉に甘えることにした。

そして、彼が連れていってくれたのはゴールド・ホテルという、確かに街では一番のホテル(セレンゲというホテルに隣接しており、こちらのホテルは当時、地球の歩き方でも紹介されていた)。

お兄さんは、フロントでわたしの代わりに宿泊の交渉をしてくれた。

交渉の末、1泊55トゥグルク(約3,300円)の部屋に通される。

当時、海外でATMを使って現地の金を引き出すことを過剰に恐れていたわたしは、「現金があまりないからクレジットカードを使いたいなぁ」とお兄さんに言うと、「ここはカード使えないよ。でも、ちょっと部屋で待ってて!どっかでカードリーダー借りてくるよ!1時間したら戻るから!」と、張り切ってどこかに行ってしまった。

 

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部屋からの見えるのはホテルの一部なのだが、この旧共産圏っぽい建物にドキドキワクワクしたのを覚えている。

 

 お菓子を食ったりベッドに転がって一人ではしゃいでいると、お兄さんが戻ってきた。

「この街は田舎だから、カードリーダーはなかったよ!でも、大丈夫。ATMでお金をおろしといで。俺の弟が君をサポートするから!」と、どこまでも親切な彼。

しかしあれこれお騒がせしてしまったが、先ほども申し上げたように、当時のわたしは少ない手持ちの現ナマを使うより、ATMを使う方がもっと嫌だった。

そんなわけで、結局弟さんについてきてもらって、翌日の小遣いに充てようと思っていた現金で支払うことに。

しかし、このお兄さん夫婦と弟さんも同じホテルに滞在していたらしく、何かあったら部屋においでと最後まで親切だった。

ところで、勝手にこのお兄さんは現場作業員の雇い主だと思い込んでいたが、あのお兄さんが何者だったかは結局最後まで分からなかった。 

 

そんなこんなで最初っから想定外な出来事が起きたドキドキハラハラのエルデネト滞在日記、まだまだ続きます。

乞うご期待!

 

続きはこちら

maniaceasterneurope.hatenablog.com

 

【行き方】

2013年にわたしがウランバートルからエルデネトに訪れた時の話なので、あまり参考にはならないかもしれない。当時、ウランバートルのソンギノハイルハンバスターミナルから、バスに乗ってエルデネトまで向かった。行きは大型バスで、約1時間おきにトイレ休憩あり(しかしほとんど青空トイレ)。帰りはミニバンでトイレ休憩ほぼなしのまま6時間。当然のごとく膀胱が死んだ。

ちなみに、2013年当時のソンギノハイルハンバスターミナルは、こんな感じであまり綺麗に整備されていなかったのだが、現在はすっかり綺麗にリニューアルしているようだ。

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【場所】

 (最終訪問日:2013年10月)