東欧マニアックガイド

これまで訪れた東欧圏のちょっとマニアックな場所を紹介しています。

未承認国家の日常風景(後編)【ティラスポリ/沿ドニエストル共和国】

以前、未承認国家・沿ドニエストル共和国ティラスポリの様子を紹介した。

今回の記事は、その後編である。

(前編はこちら。未読の方はぜひどうぞ)

maniaceasterneurope.hatenablog.com

 

さて、想像していた「未承認国家」のイメージとは全く異なり、あまりにも平和でのんびりとしたティラスポリ

9月上旬のティラスポリはまだまだ暑く、炎天のもとを歩き回るのはなかなか酷だったが、すっかりこの街の不思議な魅力に惹き付けられてしまったわたしは、とにかく散策を続けることにした。

 

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アレクサンドル・スヴォーロフの像と道を挟んだ反対側には、戦車が突然現れる。

 

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そして、トランスニストリア戦争の戦死者のお墓。

トランスニストリア戦争は、ソ連崩壊後の1992年に勃発した武力衝突である。

モルドバ共和国沿ドニエストル共和国による戦いで、結局はロシアのバックアップがあった沿ドニ側が有利で、決着はつかず引き分け状態で終わった。

 

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強い日差しの下、星の中で炎がメラメラと燃え続けていた。

 

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墓の近くには礼拝堂らしき建物も。

 

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お墓と礼拝堂の近くを流れるのは、ドニエストル川だ。

ウクライナ西端を源流とし、モルドバ沿ドニエストル共和国を通り、黒海へ注いでいる。

川岸は水浴びをする人で賑わっていた。

 

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さらに10月25日通りを西へと進むと、政府庁舎の前にコートをはためかせながらそびえるレーニン像を見ることができる。

この向かい側には、ティラスポリ出身の科学者で、最初に有用なガスマスクを発明したといわれるニコライ・ゼリンスキーの博物館があったのだが、残念ながらわたしが訪れた日は休館だった。

 

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しかし気を取り直して、わたしはさらに西へと進んだ。

というのも、この先には要塞の博物館があるのをGoogleマップで確認していたのだ。

18世紀末に建てられた要塞で、現在は修復され内部は博物館になっているとのことだった。

 

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大通りから少し狭まった通りへと入っていく。

この先に何かがあるとは思えない庶民的な住宅街っぷりに、自信喪失して大通りへと引き返そうとしたが、Googleマップで見たところ、どうやらこの道で合ってそう。

全くひとけもない上、数匹の野良犬がうろうろ餌探しをしていたが、Googleマップを信じておそるおそる進んだ。

 

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そして辿り着いた博物館。

ここも見事にやっていなかった。

ビビリ散らかしながらも無事に目的地に到着したというのに。

 

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残念ではあったが、近くにあった集合住宅が良い具合に共産圏の香りをまき散らしていた。

 

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ぱっと見、金太郎飴のように見える建物も、よく見てみると一軒一軒窓の形が違ったりしていて面白い。

 

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要塞の東側にも民家がたくさん。

要塞は土手に囲まれているので、小高い土手の上からは遠くまで景色が見渡せる。

しばらくぼーっと眺めた後、駅まで歩いて戻ることにした。

 

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帰り道も、気になった建物などをカメラに収めながらのんびり歩く。

 

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これは車のパーツ屋だろうか。

店の前にはまつげ付きの車。

 

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カメラ目線をくれた黒猫。

ティラスポリでは、野良犬はもちろん、猫の姿もあちこちで見かけた。

 

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車線の無い車道とガタガタの歩道。

現地の人からしたら何気ない景色でも、わたしにとっては見慣れない故にワクワクする景色。

惹かれて、つい足をとめてシャッターを切ってしまう。

 

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この住宅も張り出し窓が素敵。

 

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しかし、この街には実にのんびりした空気が流れている。

別の国というより、タイムマシンに乗って別の時代に来たような不思議な気分。

 

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駅に戻って来た。

構内でバスのチケットを買ったが、片言のロシア語でチケットを買おうとするわたしに窓口のお姉さんはとても愛想良く対応してくれ、最後の最後まで嬉しい気分で過ごすことができた。

たったの1日、というか、合計滞在時間は6時間ほどだったと思うが、一生記憶に残る滞在になったのは間違いない。

「未承認国家」という物々しい響きからはイメージもできないような、平和で穏やかな日常がそこにはあった。

 

 

 (最終訪問:2018年9月)