かつての賑わいは遠い彼方へ……ゴーストタウンと化したウエスタン村【コシン/ポーランド】
ウエスタン村。
この言葉を聞くと、2006年に休園になったまま放置され続けている、日光のウエスタン村が頭に浮かぶ。
行ったことはなくても、廃墟好きなら気になる場所のひとつではないだろうか。
ポーランド西部のコシン(kosin)という人口数百人の村に、廃墟として今なお残っている。
実に辺鄙な場所に位置しており、電車やバスのアクセスもない。
最寄りの大きい都市はポズナンだが、そこからも車以外のアクセスは不可能な模様。
非常に静かな、正直に言ってしまうと、かなり裏寂しい場所にぽつんとある廃墟だ。
入り口付近のこの建物は、門衛小屋だろうか。
敷地内に入って右手には、木造の小屋が何棟か並んでいる。
このウエスタン村は、西部劇の舞台のような気分が味わえるテーマパークとして、2002年にオープンした。
敷地内には、ホテル、レストランのみならず、郵便局や銀行、保安官事務所といった建物も再現されていた。
また、当時は70頭もの馬を飼育し、ミニ動物園も併設されていたそうだ。
夏場にはインターンシップの学生を数十人受け入れることもあったとか。
時には乗馬イベントなどが開催され、カントリー音楽の歌手が演奏することもあった。
しかし、財政難に陥り、夜逃げ的な感じで2014年に閉業。
今はワイルドにも程がある廃ウエスタン村となってしまった。
その後、何度も売りに出されはしたものの、あまりにも高価すぎて全く買い手が付かず今に至る。
さらに、倒産前に働いていた従業員の何名かは、数か月分の給料をいまだに受け取っていないらしい。
今や、近隣住民から「ゴーストタウン」と呼ばれている始末。
閉鎖から7年たった今、木造の建物はだいぶ老朽化が進んでいる。
とはいえ、おそらく県内唯一のテーマパーク系廃墟ということもあり、ここを訪れる廃墟好きも多い。
木造ではない立派なつくりの建物も残っている。
訪れたのは5月上旬。
まだ春らしい花が咲いていた。
ドアも完全に外れ、家具なども外に引っ張り出されている。
受付があったであろうメインの建物。
内部は荒らされており、これといった残留物がない状態。
壁に描かれたスケッチのような絵は元からあったものだろうか。
動物小屋か納屋のような雰囲気の煉瓦作りの建物。
この二階部分には元々バルコニーでもあったのだろうか。
すっかり色あせてしまった入り口の看板。
乗馬はもちろん、近くの川でカヤックに乗ることもできたそうだ。
金曜日は20時からディスコ、の文字も悲しくくすんでいる……
近隣住民の一人は、とあるメディアのインタビューでこう答えている。
「巨大な廃墟になってしまったけど、小さい頃によく遊びに来ていた思い出の場所。
馬やアトラクションを見ては喜んでいたよ。
今や、夕方に強い風が吹こうもんなら、木のきしむ音が聴こえてくる。
もう空っぽで誰もいないけど、この場所は自分なりに生きているんだなって気がする」
【行き方】
一番近い大都市はポズナンだが、それでも120kmほど離れている。大都市ではないが、ルブシュ県の県都ゴジュフ・ヴィエルコポルスキからは80kmほど。いずれにしても車がないと到達不可能。
【場所】
66-530 Kosin
(最終訪問:2021年5月)