1万年前~中世までの暮らしが覗ける、古代遺跡ビスクピン【ビスクピン/ポーランド】
ポーランドには、ビスクピン遺跡という、約1万年前~中世までの集落や建物を再現した古代遺跡の野外博物館がある。
ここで発見された青銅器・鉄器時代の集落は、ポーランド国内ではもちろん、ヨーロッパにおける考古学上でも重要なものだそうだ。
日本にいた頃、遺跡発掘現場で半年ほどだがバイトをしていた身としては、いつか訪れたい場所のひとつであり、今年ようやくその夢が叶ったのである。
ビスクピン遺跡は、ポーランド中部のクヤヴィ・ポモージェ県にあり、アクセスが非常に悪い。
我が家からだと、公共交通機関では到達ほぼ不可能そうだったので、おとなしく車で行くことにした。
当日はあいにくの雨で、道中フロントガラスに叩きつける激しい雨に心を砕かれそうになったが、遺跡に着くころには雨脚も弱まりほっと一安心。
敷地内は案外広く、7月上旬、子どもたちの夏休み真っ盛り期だったこともあり、駐車場には遠足用の大型バスも停まっていた。
チケットを買っていざ入場!
木が生い茂ったこの野外博物館の見学は、雨上がりに発生した大量の蚊との戦いでもあった。
入ってすぐは石像エリア。
中世辺りの石像がずらりと並んでいる。
ちなみにすべてレプリカ。
なぜかスラヴ圏外の像まであり、こちらは「日本の庭園ランプ」の名で展示されていた石灯籠らしきもの。
さらに奥へと進むと石棺跡(これもレプリカ)。
かまどの再現。
放牧エリアには馬や羊などがいっぱい。
昔風の厩も。
こんなオシャレなカフェもある。
どうせなら、もっと古代or中世風のカフェにしたらいいのに……というのはわがままだろうか。
ここだけ突然現代風なので、一気に現実に引き戻されるというか、妙に浮いていて雰囲気をぶち壊している気がしなくもない(笑)
敷地内の真ん中辺りには、10~11世紀頃の中世初期の集落を再現したエリアがある。
鍛冶屋の屋内。
お土産として昔のコインのコピーも買える。
パン焼きかまども再現されていて、実際に当時食べられていたであろうパンを焼いていた。
ペイガン好きの心をくすぐる、骨を使ったアクセサリーなども売られている。
この遺跡が発見されたのは1933年。
ビスクピン湖の排水・灌漑工事が行われた結果、湖の水位が下がり、集落の跡が姿を現したのだという。
しかし当時、地元の人たちはその考古学的価値を知らずに遺物を発見していたが、学校の生徒がその旨を教師に話したことにより、集落跡を歴史的発見へと導いた。
かつての遺跡発掘現場の写真も展示されている。
女性はスカートにエプロン姿!
わたしが日本の発掘現場で働いていた時は、Tシャツ、ジャージに長靴、農作業用帽子だった(笑)
小さな舟で、ビスクピン湖クルーズもできる。
この遺跡のメインである約2700年前の青銅器・鉄器時代の集落。
入り口の上にはヤギの頭蓋骨!
異教らしさがあってとても良い。
当時の長屋が2棟再現されている。
実際の集落はこんな姿をしていたらしい。
集落内部から入り口を眺める。
建物の中には入れるようになっていた。
この丸太をそのまま利用したような階段、ずいぶん狭くて急勾配なので、酔っ払ってる時にのぼったら危ないだろうなぁ。
わたしみたいに運動神経の鈍い人間は、素面でものぼるのに勇気がいるが、昔の人はへっちゃらだったのだろうか。
ドライ草花。
集落をぐるっと囲んでいた要塞の一部も復元されており、上にのぼって集落を見下ろすこともできる。
こちらの棟には、主にお土産屋さんが入っていた。
さて、お次は約1万年前、石器時代の頃のお宅。
葦で覆われた、もはやファンタジーみすらある形の住居。
この時代は、狩猟・採集をして暮らしていたらしい。
人がいたのであまり写真に収めることができなかったが、こちらは紀元前6000年前の新石器時代エリア。
この頃はすでに農作物を作るようになっており、農民たちは長屋に住むようになったらしい。
最後に、お土産ショップで買ったトートバッグ。
スラヴの魔女バーバ・ヤガと、集落プリント。
そんなわけで、実に不便な場所にあるものの、のんびり散歩がてら古代の暮らしを垣間見ることができる楽しいスポットであった。
また、季節ごとにキリスト教伝播以前のペイガン的催し事をやったりもしているようなので、そうしたイベントにあわせて訪れるのも面白いかもしれない。
【行き方】
博物館の公式サイトによると、Żnin(ジニン)という最寄りの小さな町からバスが出ているとのこと。もしくはGąsawa(ゴンサヴァ)という村からもバスで行けるらしい。いずれにしてもまずその町やら村に到達すること自体が面倒くさそうである。ポズナンやグニエズノから直通バスが出ているのでは?と思ったが、無さそうだった。公共交通機関利用者にはひどく不便な軽度の秘境に位置している。
【ウェブサイト】
【場所】
(最終訪問:2022年7月)