東欧マニアックガイド

これまで訪れた東欧圏のちょっとマニアックな場所を紹介しています。

人里離れた場所に佇む、カルトなデコラティブ修道院【サハルナ/モルドバ】

皆さんはモルドバにどんなイメージがあるだろうか。

2000年代半ばに「恋のマイアヒ」で一世を風靡したグループ、O-zoneの出身地。

ウクライナと並ぶ欧州最貧国。

バンドロゴが毛細血管だの毛だの言われているブラックメタルバンドBasarabian Hillsが生まれた国。

 

正直わたしもそんなイメージしかなかった。

一体何があるのかもよく分からない、人口270万人ほどの欧州の小さな国。

 

モルドバを訪れる前に、モルドバ人に尋ねたことがある。

モルドバでオススメの場所はありますか?」

と。

すると彼は、こう答えた。

モルドバなんて何も無いから、来る価値無いよ。もしお金に少し余裕があるならば、隣のルーマニアに行った方が良い」

 

現地人が「来るな」と念を押す国、これ如何に……

 

期待と不安に胸を膨らませて訪れたモルドバ

しかしこの国は、わたしの期待を遥かに上回る東欧情緒に溢れた素敵な場所だった。

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(この建物は、キシナウのシンボル的建物となっているマンション。1970年代後半に建てられ、現在も人々が住んでいる。いかにもソ連らしいデザインが目を引く) 

 

今回は、モルドバの隠れた観光名所のひとつ、デコラティブな修道院を紹介しよう。

首都のキシナウから北に約110km、モルドバ北東部の村サハルナ(Saharna)にその修道院はひっそりと佇む。

この先に何かがあるとは思えないようなドニエストル川沿いの狭い道を進むと、修道院の入り口に辿り着く。

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一般的にはサハルナ修道院と呼ばれることが多いが、正式名称は「聖三位一体修道院」だそう。

 

モルドバは、正教が主流の国。

正教の教会は、カトリックに比べて煌びやかなイメージがある。

が、人里離れた小高い丘に囲まれるこの修道院は、その煌びやかさの中にどこかカルトな怪しさすらも帯びている。

そこかしこに並ぶカラフルな建物やモチーフが、ナンセンスなカルト映画の世界に迷い込んだ気分にさせるのかもしれない。

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なんでもこの修道院は、ロシアからやってきた修道士によって1776年に設立されたらしい。

伝説によると、この修道士は、神が修道院を建てる場所を示してくれるのを期待し、40日もの間断食し、祈り続けた。

40日目に彼は、岩山の上に聖母マリアの輝く姿を見る。

彼女が指していた場所に行ってみると、そこには聖母マリアの足跡が残っていた。

そして彼は、その場所に礼拝堂を建てたという(あくまで伝説です)。

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岩山の上にポツンと建っているあの小さい建物、これがその礼拝堂だ。

 

正門をくぐり修道院に足を踏み入れると、花の世話をしていた女性に話しかけられる。

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何かと思いきや「建設費用のための募金にご協力を」という話だった。

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おそらくこの建物を新築か改装していたのだと思う(2018年9月時点)。

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修道士は何も話しかけてこない。

 

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ここの修道院では、水色×黄色の組み合わせをよく見かける。

 

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お堂のような小さな建物の屋根も水色×黄色。

 

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 内部も水色×黄色。

 

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正門を抜けてまっすぐ進んだ先にあった十字架。

 

余談だが、↑の写真左に写っている女性、白いスカートをはいているように見えるが、実はただの布を腰に巻いている。

世界には肌の露出を大目に見てくれる宗教施設もあるとは思うが、モルドバ正教会は過度な露出はNG。

教会や聖堂などに入る場合、ショートパンツや短いスカートをはいている人は、入り口に置いてあるサロン(腰布)で隠さなければならない。

また、女性は髪を隠す必要もあるので、スカーフを被って髪を覆う。

(スカーフも誰でも借りられるものが教会などの入り口に置かれていたが、誰の頭髪に触れたかも分からないので(笑)、気になる人は自前を持参した方が良いかも)

 

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マリア様パネルと、エメラルドグリーン×薄イエローのミニ噴水が、これまたキッチュな雰囲気を漂わせている。

 

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十字架はいたるところに。

 

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宗教施設の一部というより、田舎のおばあちゃんが住んでいそうな建物。ここに修道士たちが住んでいるのかな?

 

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非日常的な不思議な空間の中で、ゆっくりと時間が過ぎていく。

礼拝堂にもお邪魔したのだが、ミサが始まってしまったので、少しだけ見学させてもらって写真は撮らずに退散。

 

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修道院内部から見た正門。

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正門のすぐそばには人懐こい野良猫がいた。

 

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売店の近くをウロウロする猫たち。食べ物を狙っている。

 

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修道院近くの駐車スペースからの景色。


修道院の周りは自然に囲まれており、この近辺は景観保護区となっている。

ベッサラビアの小スイス」と呼ばれているとかいないとか。

 

サハルナの修道院は、ちょっとした秘境とも呼べるアクセスの悪い場所にある。

しかし、まるで別の世界にワープしたような、不思議で神秘的な場所だった。

サイトを見てみると、どうやら日本でいう宿坊のように、宿泊することもできるようだ。

今度は宿泊してみたい気もする。

 もしまた行く機会があればの話だが……

 

【行き方】

キシナウから修道院までの移動手段は、おそらく車のみ。サハルナ村行きのバスもなければ電車もないからだ。レンタカーを借りて自力で行くか、ツアーに参加するのが妥当かと思う。ちなみにわたしは別の修道院で知り合ったアメリカ人、スペイン人、スイス人と一緒に車で向かったが、全員あまりにも英語が達者で、英語力も低く基本的に根暗なわたしは、ろくに会話ができず移動中はかなり辛かった……

【ウェブサイト】

http://manastirea-saharna.md/

【場所】

5431, Saharna, モルドバ

(最終訪問:2018年9月)