リトアニアの巡礼地。おびただしい数の十字架が建つ丘【シャウレイ/リトアニア】
2015年のまだ寒い3月下旬、なんとなく気になっていたリトアニアを訪れた。
その頃、ポーランドで絶賛ニート中だったわたしは、少しだけ冒険をしたい気分になって、隣国まで足を運ぶことにしたのだ。
訪れたのは、首都のヴィリニュス、第二の都市カウナス、そして第四の都市シャウレイ。
今回は、十字架の丘で有名なシャウレイを紹介しよう。
ラトビアの首都リガからバスでシャウレイまでやってきたわたし。
ホテルにチェックインし、早速お目当ての十字架の丘へと向かった。
シャウレイのバスターミナル。
ショッピングモールが併設されており、十字架の丘行きのバスもここから出ている。
そういえば、ここのトイレに思い出がある。
出発前にトイレを使おうとしたのだが、ヨーロッパによくある有料式だった。
出入口前で小銭を探していると、ちょうどトイレから出てきたご婦人が「入っちゃいなよ」と出入口を開けたままにして通してくれたのだ。
対面で代金を渡して入る有料トイレだと難しいが、機械で支払うタイプのトイレでは、時々こうして気の利く人(?)に出くわすことがある。
バスの運転手からチケットを買って、乗車。
20分ほどで、十字架の丘近くのバス停に到着する。
街の中心からさほど離れていないが、だいぶ田舎で少しビビる。
本当にこの先に何かあるのか?と不安を抱えながら、こんなうら寂しい道路を歩いていく。
コウノトリの巣に激突していくような飛行機の写真が撮れた。
丘までの道すがら発見した天使……
曇り空をバックに身体を傾けて腰かけるその姿は堕天使さながら、退廃感がすごい。
ちなみに、どうやらここはレストランだったようだ。
ようやく十字架の丘に到着。
まだ寒さが沁みる3月の曇りの日だったが、観光客もちらほらいた。
やはり生の十字架の丘は、ものすごい迫力だ。
たとえ十字架じゃなかったとしても、これだけ大量の何かが一か所に集まっているのは、少し異様な光景である。
ちなみに、ブラックメタル好きのわたしの友人は、シャウレイを訪れたことはあるが、真のブラックメタラーなのでこんな十字架だらけの場所にはあえて行かなかったと言っていた(笑)
信念を貫いていて偉い(笑)
ここに初めて十字架が建てられたのは、およそ200年前。
1831年に起きたロシア帝国に対する蜂起で亡くなった人のために、十字架が建てられるようになったそうだ。
が、リトアニアがソ連の支配下に置かれていた間、この丘は数回にわたりソ連からの破壊を受けた。
しかし、破壊される度に、リトアニア人の手によって丘は復活した。
この丘は、リトアニア人にとって平和的抵抗の場であり、彼らのアイデンティティにもなっていたそうだ。
今でも十字架の数は増え続けており、その数は2006年の時点で10万ほど。
最大で3mの高さの十字架を建てることが許されており、一般人や観光客も十字架を建てられるという。
ろうそくは禁止。
木製の十字架も多いので、ろうそくの炎が十字架に移ったら一気に大惨事だろう。
実際、2006年に火災が起きて、約50m²のエリアが焼けてしまったそう。
と、十字架の丘の紹介は以上だが、わたしがシャウレイを訪れて心くすぐられたものは、この丘だけではなかった。
何に惹かれたかというと、それは……
街並みである。
東欧らしさが滲み出た良い雰囲気の建物をあちこちで目にすることができて、心が躍ってしまった。
廃墟だろうか。
グレーの壁と落書きが良い感じ。
これは、なんとなくデザインが面白いなと思った建物。
歩道も結構でこぼこ。
雨上がりにこういう道を歩くと、思いのほか深い水たまりに足がドボンと浸かって驚くことがある。
共産主義時代に建てられたアパートがたくさん。
こちらは中心からは少し離れた住宅街。
宿泊したホテルがあった付近。
屋根裏部屋に泊まった。
確か、シャワーとトイレも室内についていたのに、値段が異様に安くて、1泊1400円程度だった気がする。
ペンションのような宿で、狭い部屋だったが居心地が良かった。
ただ、トイレのちょうど上の天井が斜めになっていて、何度も頭をぶつけた。
天窓だったので、外の景色は見えなかったのだが、隙間からカメラで撮ったもの。
なにげないリトアニアの住宅街の景色。
十字架の丘以外に特に見るところもない地方都市だが、逆に現地の人々の普通の暮らしが垣間見られるような、心落ち着く街であった。
【行き方】
十字架の丘までは、バスかタクシーで。バスで行く場合、バスターミナルの12番乗り場から、1時間に1本程度の頻度でバスが出ている。丘の最寄のバス停は「Domantai(ドマンタイ)」。そこで降りたら、少しだけバスの進行方向とは逆に進み、目印として十字架が建っている道に曲がる。そこから丘までは約2km。たくさんの方がブログなどで詳しく行き方を紹介しているので、実際に訪れる方は最新情報をチェックしてみてください。
【場所】
Jurgaičiai 81439 リトアニア
(最終訪問:2015年3月)