工業都市につくられた炭鉱労働者のための集合住宅【ニキショヴィエツ/ポーランド】
ポーランド南部のシロンスク県は、炭坑業が盛んなポーランドの工業都市である。
中でもニキショヴィエツ(Nikiszowiec)というカトヴィツェ近郊の街は、炭坑労働者のために作られた集合住宅で有名だ。
ニキショヴィエツの街は、1908年~1918年の間にドイツ人の2人の建築家の設計を基に建設された。
1978年には歴史的建造物に指定され、今ではシロンスク地方の観光地のひとつになっている。
「Nikiszowiec Szyb Pułaski」というバス停で下車し、ニキショヴィエツの街へと向かう。
バス停の近くにはこんな煙突が2本。
いかにも工業都市らしい景色にドキドキしてしまう。
バス停からニキショヴィエツの集合住宅エリアは目と鼻の先。
赤い窓枠が目立つ、3階建ての煉瓦造りの建物がニキショヴィエツの街並みの特徴だ。
色合いが統一された景観は、まるで映画のセットの中に迷い込んだような気分にさせてくれる。
ヨーロッパの住宅地によくある中庭。
この日は天気も良く、緑とピンクのごみ箱すら可愛く見えてくる。
イケメン犬が窓辺に座って街ゆく人々を監視していた。
どうでもいい話だが、ポーランドは犬だけではなくて、おばさんがよく窓辺から外を眺めていることがある。
その姿は監視カメラに例えられるほど。
〇〇さんが早朝××に買い物行くところを見たよ、とか報告してくるおばさんが本当にいるのだ。恐ろしい。
ニキショヴィエツ自体は小さな街なのだが、中心地にはレストランやカフェ、博物館などがあり、観光客の姿もちらほら。
レストランが混んでいたのでカフェに入ったが、食事らしい食事がメニューになく、バニラアイスとチョコレートケーキのセットを注文。
そしてドリンクはビール……
このデザートとビール2杯で30.50PLN(当時のレートで926円)だった。
ニキショヴィエツの中心地には博物館もある。
Oddział Muzeum Historii Katowic -Dział Etnologii Miasta
Rymarska 4, 40-425 Katowice
こちらはかつて共同の洗濯場で使われていたもの。
現在博物館がある通りに洗濯場が存在し、ニキショヴィエツの女性たちはそこで洗濯をしていたらしい。
仰々しい洗濯道具を見ると、当たり前のことなんだが、昔は洗濯をするだけでも一苦労だったんだなと。
炭鉱労働者の衣類は並大抵の汚れ方ではないだろうし。
洗濯をするにも一日がかりだったようだ。
壁一面に展示されているのは石鹸。
この博物館には、一般家庭の家の中が再現されたスペースもある。
手前にあるのはベビーベッド。
これは今でいうところのガスコンロ&オーブン。
ドールハウスもあった。
寝室のベッドのど真ん中には人形が鎮座していた。
怖い。
ちなみに、以前紹介したワルシャワの共産博物館にも似たような展示がある。
興味のある方はこちらの記事もどうぞ。
maniaceasterneurope.hatenablog.com
街の中心には、1914年に建設されたネオバロック教会があり、無料で見学することができる。
中はクリーム色を基調とした明るい雰囲気。
他に見学者もおらず、静かな中でゆっくり見て回ることができた。
実はニキショヴィエツに訪れるのはこれで2回目。
初めて訪れたのは2014年の秋、カトヴィツェ近郊に住む現地のメタル友達が車で連れて行ってくれた。
しかし、夜19時以降に訪れたわたしたち。
都会ではその時間ならまだまだ人がたくさん出歩いているだろうが、ニキショヴィエツの街はシーンと静まり返り物音ひとつしなかった。
そのくせバーのような場所だけ明かりが灯っていて、中からおじさんが真顔でこちらを凝視してきたりして、正直少し不気味に感じてしまった。
しかも後日、別のシロンスク出身のポーランド人に「夜間にニキショヴィエツなんか行っちゃだめだよ!危ないよ!何考えてるんだ」と怒られ、余計に怖くて危険な印象が根付いてしまった(実際に現地のサイトで調べると「カトヴィツェの危険な地域」として紹介されていることもある)。
が、今回改めて日中に訪れ、街中でたくさんの人々を確認したり、昼の明かりの中で落ち着いた雰囲気の街並みを眺めたりして、わたしの中でのニキショヴィエツに対する印象がまた変わったのであった。
【行き方】
カトヴィツェ(Katowice)中央駅からバスで20分ほど。わたしは「Nikiszowiec Szyb Pułaski」というバス停で下車した。レンガ造りの建物が見えるので、そちらに向かって歩いていけばOK。
【場所】
Osiedle Nikiszowiec, 40-432 Katowice(住所は街の中心部)
(最終訪問:2019年6月)