東欧マニアックガイド

これまで訪れた東欧圏のちょっとマニアックな場所を紹介しています。

廃工場で開催されるウクライナ随一のメタルフェス【ハルキウ/ウクライナ】

今回の記事は、完全に筆者の趣味丸出しの内容である、ということを先にお断りしておく。

さて、ウクライナの北東部には、ハルキウ(ロシア語ではハリコフ)という都市がある。

日本人にはあまり馴染みがないが、ウクライナではキエフに次いで人口が多い都市でもある。

ハルキウは19世紀から機械工業などで繁栄してきた工業都市なのだが、同時にブラックメタルの聖地としても一部のマニアの間で知られている。

(注:ブラックメタルとはヘヴィメタル音楽のサブジャンル。これ以上ブラックメタルについて説明すると長文になってしまうため、分からない方はお手数ですがご自分でお調べください)

 

わたしは、2018年末に『東欧ブラックメタルガイドブック2』という書籍を出版し、その表紙を飾ってくれたのも、ウクライナのNokturnal Mortumというブラックメタルバンドだった。

 

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ウクライナには数々のブラックメタルバンドが存在し、東欧エリアではポーランドに次ぐバンド数である。

先述したNokturnal Mortumのみならず、Drudkh、Dub Buk、Hate Forestなどといった、今なお人気もしくはカルト扱いされているバンドの多数がハルキウ出身だ。

ハルキウには、ノルウェーのインナーサークルのような明確なブラックメタルサークルなどは存在しないらしいが、地元のメタラーたちの結びつきが強く、90年代からブラックメタルシーンが根付いていた。

 

そして、ハルキウでは1998~2010年までの間、Kolovorot Festというエクストリームなメタルフェスが 開催されてきた。

初期のラインナップは、ブラックメタルバンドのみならず極右ロックバンドも交えたものだったので、今だったらAntifa(極左過激派)が怒り狂ってフェスをブチ壊しに来そうである。

2010年を最後にKolovorot Festは終了してしまったが、それから9年後の2019年、ついに「Metal East : Нове Коло(新サークル)」として、この地に新たなフェスが誕生した。

 

表紙を飾ってくれたバンドや、本の執筆に協力してくれたウクライナ人への献本を兼ね、わたしもこのフェスに参加することにした。

ウクライナにはこのフェス以前にも2度訪れているが、ライブを観るのは初めてだ。

現地の友人の協力を得て、宿は1泊20USドルのアパートメントを予約してもらった。

 

フェスの数日前にウクライナ入りし、しばらくキエフを楽しんだ後に、電車でハルキウへ移動する。

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ハルキウには特にこれと言った観光地は無いのだが、面白い場所もあったのでそれは後日紹介したい)

 

2019年のMetal Eastの日程は5月31~6月2日で、チケットは3日間の通し券で60USドル。

フェスの公式HPからチケットを購入できる。

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会場の入り口。

奥に見える黄色と黒のしましまの小屋でチケットのオーダーメールを見せる。

すると、チケット代わりに布製のリストバンドをつけてくれるのだが、金具部分をペンチで力いっぱい締められるのが怖かった。

 

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この会場内の建物は、19世紀後半に蒸気機関車の工場として使われていた。

2016年にリノベーションを施し、現在もほぼ当時のままの建物が保存されている。

イベント会場の他にも、ダンススクールや食堂などもあり、普段から地元民が通う場所になっているようだ。

 

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建物は2つに分かれており、こちらではバンドマーチやアクセサリー、観光地にありがちなお土産(マグネットなど)、絵画までもが販売されていた。

 

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WackenやHellfestなどの超有名大型フェスとは違い(どっちも行ったことないけど)、観客が圧倒的に少ないので会場内も広々として見える。

 

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思わず目を輝かせてしまうようなマーチもたくさん売られている。

現金オンリーだったので、爆買いしたい人はまとまった現金を用意しておいた方が良い。

 

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ポーランドブラックメタルArkonaのテープも豊富に揃っていた。

 

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ゴーカートもあり、時間限定で乗ることができる。

 

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建物の外には屋台などが並び、食べ物を購入することもできる。

日向は地獄のような直射日光なので、日陰に人がひしめき合っていた(みんな勝手にイスやテーブルを移動している)。

 なお、会場内のビールは300円弱、高くても400円ほどだった。

 

ここからは、ライブの様子を少しだけ雑に紹介。

一眼レフなどの本格カメラは基本的にプレス以外は持ち込めないので、スマホ内蔵カメラで撮影したためひどい画質だがご容赦願いたい。

 

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ウクライナのアトモスフェリック/デプレッシブ・ブラックメタルBergrizen。

 

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Nokturnal Mortum、Drudkh、元Dub Bukといった超豪華メンバーによるデスメタルNecrom。

 

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こちらはオーストリアのポスト・ブラックメタルHarakiri for the Sky。

 

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ウクライナのアトモスフェリック/ドゥーム・ブラックメタルRaventale。

 

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伝説のカルトバンド扱いをされているHate Forest。この日限りの特別再結成ライブ。

 

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ウクライナ一有名なブラックメタルバンド、Nokturnal Mortum。

 

3日間でトータル21バンドが出演、メタルフェスの中では中型規模だろうか。

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のんびりした雰囲気の中でゆっくりとライブが楽しめ、会場は出入り自由、バンドメンバーは自分の家族を連れてくるというアットホームなフェスだった(トリのNokturnal Mortumなんて、メンバーの子どもをステージにあげていた)。

今年は新型コロナウイルスの影響で、元々は5月開催だったが8月に延期。

無事に開催されるようだったら、今年も参加するかもしれない。

 

【行き方】

会場最寄りの地下鉄駅は「Завод ім.Малишева(Zavod imeni Malysheva)」。ハルキウには地下鉄の路線がひとつしかないので迷うことは無い。キエフと同じく、どこまで乗っても値段は一律。わたしが訪れた時は30円ほどで乗ることができた。ただ、ウクライナではUberも広く普及しており値段も安いので、抵抗が無い人はUberも便利。

【ウェブサイト】

https://novekolo.com/en/

【場所】

вулиця Плеханівська, 126, Харків, Харківська область, 61000

(最終訪問:2019年6月)